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05 30

なんで「リーマンショック」なの?

(友人からのメール)

伊勢志摩サミットの会見で安倍首相が「リーマンショック」を何度も口にしました。その当時、メディアで国際金融情報を担当していた関係で少々気になったので、メールでお邪魔させてください。

米準大手証券会社リーマンブラザースが資金繰りに行き詰まって経営破綻したのが2008年の9月。その過程で、世界の金融大手(証券・銀行・保険など)の資金繰り不安があらためて浮上。金融機関が資金の確保(貸し出しの手控え)に動いて、世界的な流動性不足(通貨供給の落ち込み=本来の意味のデフレ)が生じ、景気が低迷・悪化した。――というのが日本で俗に「リーマンショック」と呼ばれる事態でしょう。

安倍首相は会見で、「リーマンショック」の少し前(08年7月)に洞爺湖サミットが開かれていたが、そのような危機に陥る可能性を議論していなかった」と主張(洞爺湖サミット当時の首相は福田康夫。米大統領はせがれブッシュ)。「いま世界経済は同じようなリスクに直面しており、今回は危機の再発を防がなければならない」と声高に述べました。

なぜ洞爺湖サミットの議長総括(要旨)などはそうしたリスク、あるいはその懸念に言及していないのでしょうか。

金融機関の高リスクの投資行動や自己資本の不足は07年から指摘されていたこと。08年早々には米準大手証券のベアースターンズが破綻の危機に陥っていたこと。こうした中で蔵相・中央銀行総裁会議やIMF、BISなどの場で、各国当局による国際的な議論が何度も行われ、すでに対応策も打ち出されていたこと。←が理由です。

対応策の詳細を詰めて実施を進めつつあるときに、金融機関が破綻して世界的な経済危機が起きるリスクがあるなどと言ってしまったら、安定どころか、逆に経済の動揺、景気の悪化を招きかねません。従って、洞爺湖サミットがそうした議論を行っていたとしても、議長総括などで言及しなかったのは当然です。

▽「リーマンショック」というのは日本だけ

ダウ・ジョーンズ、ロイター、ブルームバーグなど海外の英語メディアには「リーマンショック」というのはまず出てきません。07年終盤の米国のサブプライム問題表面化から、08年9月のリーマンの経営破綻、世界的な信用縮小による景気の落ち込みまでの足掛け3年を、一連の動きとしてとらえて「global financial crisis」(世界金融危機)と表記されます。

この訳語も、なるべく短い表記を好む日本のメディアの悪癖が反映されていて好ましくありません。「世界規模の金融危機」、「地球規模の金融危機」、「グローバルな金融危機」などと呼びたいところです。

話を戻すと、07年の秋以降に米国で「サブプライムローン」(信用度の低い借り手向けの住宅ローン)の焦げ付きが急増。住宅ローン担保証券のポジションを膨らませていた金融機関は資金繰りが一気に悪化し、ベアースターンズは危機に陥りました。

このときは、ベアーを破綻させると連鎖的な経営危機・破綻を招き、金融システムの大混乱を招きかねないと懸念した当局、具体的にはニューヨーク連邦準備銀行が介入。銀行大手のモルガン・チェースがベアーをただ同然で買収してことを収めました。

ちなみに米国経済はこれが起きた08年1-3月期、「マイナス成長」に落ち込みました。この段階で米当局は(欧州の当局も)金融機関がベアーの危機を教訓にして今後はマネーゲームを控え、本来の業務に集中することを期待しました。本来業務とは、証券会社なら企業の株式公開・上場、買収・合併の支援、銀行なら融資を中心とする信用供与です。

金融業界は表面的にそう動きました。しかし、それまでマネーゲームの部門が高収益を上げていたこともあり、改革には消極的で、住宅ローン担保証券などを使った取引のポジションは縮小しましたが、他の、より複雑な金融商品に潜行する形でマネーゲームを続け、当局の期待を裏切りました

余談ですが、07年1月まで18年半FRB議長を務め、その間に進めた規制緩和が07-09年の「世界規模の金融危機」を招いたと批判されたアラン・グリーンスパンはのちに、「(金融機関が)あそこまで自主規制ができないとは思わなかった」とぼやいています。

ベアーの経営危機のあと、当局は規制強化に動く一方、金融システムの安定化を図るために市場への資金供給を大幅に拡大しました。これを受けて金融業界をめぐる不安は後退。株価は上昇し、米経済も「プラス成長」に戻りました。

ところが、ベアーの経営危機のきっかけの1つを作った金融業界専門のジャーナリスト(フリーのコラムニストで、ニューヨーク・タイムズなどと契約していた)が、資本不足に陥る可能性のある金融機関が複数あると警告する記事を書きました。

企業の倒産の観測記事と同じように、そう書かれればその企業・金融機関への資金供給・信用供与が手控えられるので、その企業・金融機関の資金繰りが悪化し、経営破綻が現実の可能性になります。

同じような指摘は米国以外にも広がり、米国では銀行大手のシティグループや証券大手のメリルリンチまでが槍玉になり、英国やスイスの大手銀行も同様のことを指摘される事態になりました。

こうした状況下で金融機関は一斉に資金を抱え込み、貸し渋るようになります。中でも金融機関同士が直接資金の貸与を行う短期金融市場で資金の出し手が大幅に減少。ちょっとしたタイミングの狂いによる一時的な資金不足を埋められず、本来なら大丈夫なのに破綻に直面する金融機関も出てきました。

リーマンは借入金の圧縮が遅れていて、借り換えの必要が多めでした。資金を貸す余力のある金融機関はありましたが、万が一返済されず、自分の資金繰りに瞬間的な穴ができることを警戒して貸し渋ったため、リーマンは破綻に直面しました。

ベアーを救済した監督当局は、その後の金融機関の行動に愛想をつかしていたので、リーマンの危機は傍観に徹しました。

結局リーマンは破綻。金融業界は危機感を強め、世界的に金融企業の統合再編、本来業務への集約、低採算部門の売却が続きました。米証券大手メリルリンチが銀行大手バンカメリカの傘下に入ったのはその代表例です。

日本の金融機関でも、野村證券がアジア部門の事業をゴールドマン・サックスに売却
しています。ゴールドマンは「安い買い物をした」と言われています。

07年から09年にかけての一連の動きを「世界規模の金融危機」としてとらえるの
が世界の常識。これに対し、08年9月の「リーマンの破綻(リーマンショック)」だけを単独で取り上げて屁理屈を展開した日本の首相。

先に書いたように、リスクを認識していたからこそ、洞爺湖サミットは総括、談話、
声明などで敢えてそれに触れなかったと考えられます。あの時点でもし主要国の首脳たちが「リスク」言及すれば、経済・金融情勢を悪化させていたでしょう。

リーマンショック直前の洞爺湖サミットがリスクを論議しなかったと主張し、今の状
況は当時と似ている、世界経済はいま同じようなリスクに直面している、と言った安倍首相の暴論。英国のキャメロン、ドイツのメルケル両首相が「違和感」を表明するのも当たり前です。

消費増税問題で、「『リーマンショック』並みの事態がなければ」、と言ってしまっ
たから、何が何でも「リーマンショックと同じようなリスク」という言葉を持ち出さなければならなかった安倍ちゃん。世界主要国の最高責任者が居並ぶ席で、いくら何でもあのようなことを恥ずかしげもなく口にしたのは、ずっと服用している薬の副作用で「ボケた」のか???。

参院選で敗北し、責任論が出て辞任に追い込まれる事態もないとは言えなくなりまし
た。
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tomo

Author:tomo
ジャーナリスト、池田知隆のブログです。最近の記事、イベント情報などを掲載しています。

池田知隆公式サイト
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E-mail; PEB00015@nifty.com

大阪自由大学サイト
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