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福島第一原発の最終処理  ――報道させた側の意図は何か

福島第一原発の最終処理
 ――報道させた側の意図は何か

田中良太の目覚まし時計2011年7月11日(月)号から

◆NHKの「最終処理」ニュース
 11日は大震災の記念日である。7月だから、あれから4カ月ということになる。この間、まるで何ごともしなかった世界の筆頭が政治だろう。ただただ「菅直人は辞めろ」「いや辞めない」と争っているだけ。大震災という異常な事態の下で、政治は何をすべきか? という発想そのものがないと指摘せざるをえない。

永田町という世界にいると「政治総体」といったことは、考えなくなるのだろうか。それとも1989年夏始まった「小沢(一郎)政治」が、政治家どおしの争い(というより「足の引っ張り合い」と言った方が良いような行為)を基本とすることになってしまったから、こんなことになるのか? 疑問ではある。

 仮に小沢政治の異常さだったとしても、それが20年以上続いているのだ。「十年一昔」という感覚からすれば、すでに政治の世界は堕落しきっているといえる。枕はここまでにしよう。

 NHKニュースが9日正午から、福島第一原発の「最終処理」について言及し始めたのが気になる。NHKホームページにアクセスすると、9日 12時13分付の「廃炉に向けた工程表案明らかに」が出てくる。
 
 冒頭の前文は、以下の文章だ。
  ×  ×  ×
 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、国の原子力委員会や東京電力などが検討している、中長期的な工程表の案をNHKが入手しました。この案では、廃炉に向けて最も重要となる溶け落ちた核燃料を取り出す作業を開始する時期の仮の目標を10年後に定めるとともに、最終的に原子炉建屋を解体し撤去するまでには、数十年に及ぶ作業が必要だという見方を示しています」
  ×  ×  ×
「NHKが入手しました」は特ダネ風の書き方だが、その実態はリーク(意図的な情報漏えい)であることが多い。「国営放送」意識丸出しで、「政府批判」は禁句とされているのがNHKだ。新聞などが記事にしたら「政府批判」となるネタでも、NHKなら中立的に書く。

◆新聞も追いかける

 NHKどうやらこの福島第一原発の最終処理という言葉が気に入ったらしい。7月9日18時20分に「事故処理には数十年単位」同23時50分に「工程表案 廃炉への課題を指摘」などのニュースを流した。前者は前文が
<菅総理大臣は、民主党の全国幹事長会議であいさつし、東京電力福島第一原子力発電所の事故の処理について、「最終的には数十年の単位の時間がかかる見通しになっている」と述べました>
 である。つまり「事故処理に数十年」という内容を、菅直人首相の発言として報じたもの。

 後者は冒頭、
<東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、国の原子力委員会や東京電力などが検討している中長期的な工程表の案をNHKが入手しました。この工程表の案は、廃炉に向けての作業には、さまざまな課題があると指摘しています。

 その1つが技術開発です。例えば、核燃料を安全に取り出すには、原子炉建屋の中の放射線量を下げることが欠かせませんが、そのために遠隔操作で除染を行う装置などを開発する必要があるとしています>
 と指摘している。長期間をかけても、技術開発が進まなければ「廃炉」は難しいという内容だ。

 いったいどうして突如「福島第一原発の最終処理」などが突如ニュースとなったのだろうか? NHKだけではない。10日付朝刊となると、朝日が<福島第一原発、廃炉に数十年 東電、中長期工程案>を掲載するなど、新聞各紙も追いかけた。リークした勢力にとっては「成功」といえるだろう。

◆フクシマ過小評価を軌道修正する意図
 リークの意図は何だろうか? ズバリその答は、福島第一原発事故報道の軌道修正だというのが私見である。国内のフクシマ報道は、事故について「シビアなものでない」という先入観の上に立っていた。農産物の放射能汚染が話題になれば、「問題にすること自体が風評被害を招く」とするような報道姿勢である。

 フクシマ事故は3月11日午後3時まえ、大震災・津波とともに発生した。翌12日原子力安全・保安院は記者会見して、「原子力施設事故の国際評価尺度(INES)はレベル4程度と推定される」との見解を示した。INESで「事故(アクシデント)」と定義されるのは、レベル4以上となっている。レベル3までは「事象(インシデント)」にすぎない。

 レベル4は「事故」の中でもっとも小レベルで、「事業所外への大きなリスクを伴わない事故」とされている。99年9月30日、茨城県東海村にあったウラン燃料加工施設「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故と同じだ。JCO事故では、作業中の同社員3人を含む150人が被ばくし、半径10キロ以内の住民31万人が屋内退避するという騒ぎになった。作業中の社員のうち1人は多臓器不全で死亡した。作業所外の人々への「被害」もあったから、「事業所外へのリスクを伴う事故」=レベル5とするのが正確だったはずだ。

 それにしてもヒロシマ原爆3000発分という大量の核燃料を扱っていた福島第一原発での事故だというだけでJCOとは大違いだ。しかも1、3号炉では水素爆発で、建屋が吹き飛んでしまうという、巨大な崩壊だった。それを「事業所外への大きなリスクを伴わない」レベル4だとするのは、詭弁に近い。

 18日には、原子力安全・保安院が、INESレベル5とする暫定評価の結果を発表したという記事があった。レベル5は米スリーマイル島原発事故(1979年3月28日)と同じレベルということになる。これも「事業所外へのリスクを伴う事故」というだけだ。

◆いまも続く「チェルノブイリより小規模」報道
 政府が「レベル7」(=深刻な事故)にひき上げたのは事故発生後1カ月が経った4月12日だった。このときの新聞記事でも<チェルノブイリ事故で放出された放射性物質の量は520万テラベクレル(ベクレルは放射線を出す能力の強さ、テラは1兆倍)。これに対し、今回の事故で放出された量を保安院は37万テラベクレル、内閣府原子力安全委員会は63万テラベクレルと推定している>
 という文章(毎日新聞4月12日夕刊)があった。同じレベル7でも、チェルノブイリ事故よりは小規模というわけだ。

 こうした報道はいまも続き、「チェルノブイリより小規模」といったイメージは国民に定着してしまっている。しかし放射能汚染についての測定結果など、「チェルノブイリより巨大」であることを示すデータが、つぎつぎ出始めている。このさい軌道修正が必要だ……。こうした考えが「原発ムラ」の一部で支配的になっているのではないか?
 原発ムラは、経産省、原子力安全・保安院、電力会社などで構成される「官民複合体」であろう。その一部に、ともかく理性的な判断をしている部分がある。そう思いたいという希望的観測を込めてこの文章を書いたのだが。

  田中 良太
                〒284-0023四街道市みそら4-5-4
                   E-mail gebata@nifty.com
                      TEL&FAX043-375-8889
 「田中良太の目覚まし時計」をよろしくお願いいたします。
  
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