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福島原発ー解体終了まで50年かかってもおかしくない、

◇「洗う」→「待つ」→「解体」 「東海」では22年880億円
◇溶けた燃料取り出せるか? 更地は諦めドームで隔離?

 毎日新聞 2011年8月22日 東京夕刊

 原発4基が一度に事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所。1~4号機はいずれも廃炉になるという。そもそも廃炉とは、何をどうすることなのか。それは福島のケースにも当てはまるのか。探ってみた。【宍戸護】

 廃炉とは何か?

 「原子炉から使用済み燃料を取り出し、全ての施設を解体撤去する」

 原子力安全・保安院の資料ではこう定義している。行政用語では廃止措置といい、最終的には更地に戻すことだ。

 国内の廃炉は、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)の動力試験炉(JPDR)が96年に終了した。東海発電所(茨城県東海村)は98~2020年度、浜岡原発1、2号機(静岡県御前崎市)が36年度までに実行予定。ちなみに世界でも解体を終えた原発は15基程度だ。

 大事故があった米スリーマイル島原発、旧ソ連のチェルノブイリ原発の例もすごく気になるが、あえて後述することにする。まずは、一般的な廃炉のプロセスを学ぼう。

 プロセスは(1)使用済み燃料棒を取り出す(2)原発の配管や容器についている放射性物質を取り除く(3)放射線量が時間とともに減るのを待つ(4)原子炉など内部の容器、配管を解体(5)建屋を撤去(6)更地にする--だ。キーワードは「洗う」「待つ」「解体する」。放射性物質を閉じ込めつつ行うのは言うまでもない。

 取り出された使用済み燃料をどうするかも大問題だが、今回は廃炉に話を絞る。国内の商業原発で初めて解体作業が進む東海発電所(出力16・6万キロワット)のケースでは、使用済み燃料は98年から3年かけて取り出し、再処理のため英国に輸送。解体は01年から始まり、現在は熱交換器を解体中で、まだ原子炉の解体には至っていない。総費用は885億円、作業員数は延べ56万3000人と見積もられている。

 廃炉にかかる期間は「一般的には30年」(原発を造っている日立製作所)。中部電力浜岡原発1、2号機も、約30年を予定している。

      ■ 

 さて、福島のケースだ。

 「福島の最大の課題は、燃料をどう取り出すかです」

 電気に関わるエネルギーや環境問題を研究する財団法人電力中央研究所の井上正・研究顧問はこう語る。井上顧問は核燃料や再処理を長年研究。内閣府にある原子力委員会の専門部会でも、福島第1原発の中長期の技術課題を検討している。

 「ただその前に」と井上顧問は続ける。「水素爆発で飛び散った放射性物質がついたがれきと、燃料を冷やすためにかけている放射性物質を含んだ汚染水を処理しなければ、燃料取り出しはできません」

 汚染水処理については東電が今、必死に取り組んでいる。がれきの処理は、先日、原発敷地内の屋外の配管付近から、毎時10シーベルト以上の放射線量が測定されるなど、道のりは険しい。10シーベルトといえば、被ばくすればほぼ全員が死亡するほど高い数字だ。

 いずれの作業も複雑で、人間が関わらざるを得ない。被ばく量250ミリシーベルトの上限があるため、時間との闘いになる。井上顧問は「個人的な考え」として、「放射性物質をなるべく防ぐことができる工夫をした車を特別に作り、その車に産業用ロボットのアーム(腕)をつけて、車内から遠隔操作ができる仕組みも一つの方法だ」と提案する。

 燃料の取り出しは、(1)格納容器内のプールにある使用済み燃料(2)炉心で溶融した燃料、に分けて考えねばならない。プール内の燃料は、入っている水の放射線量が平常時と大幅には変わっていないため、比較的損傷は少ないと予測している。ただつり上げるクレーンの修理や再設置が必要だという。

 問題は(2)の炉心で溶融している燃料だ。原子炉の底に穴が開き、炉内は水がなかなかたまらない状態とみる。この穴をふさぎ、炉心を水で満たしながら溶けた燃料を取り出せるかが最大のポイント。どうしたら水を満たせるかは今後の検討課題だ。水で満たせれば1979年の米スリーマイル島(TMI)原発事故が参考になるという。TMIでは炉心の燃料の約5割が溶融したが、水で満たされた炉内から燃料を取り出すことができているからだ。

 燃料取り出しはいつから始められるのか。井上顧問は「プールの燃料の取り出しが事故後5年前後から、炉心は10年前後からでは」と語る。原子炉4基のうち、できるところから始め、1基につき数年程度かかるイメージという。

 井上顧問は「実際には現場を見て、燃料のサンプルを取り出して分析しないと分からない」ともいう。燃料は取り出せたとしても再処理は難しい。処理方法や保管先はこれから検討するという。

 廃炉費用はどれぐらいなのか。各電力会社で作る電気事業連合会によると、2007年の試算で、原発1基約660億円。だが、井上顧問は「これだけの規模の事故後の廃炉だと、数百億円という単位では収まらないのでは」と語る。

      ■ 

 これだけでもため息が出そうな作業だが、「溶けた燃料が取り出せるとは思わない」と語るのは勝田忠広・明治大准教授。反原発を訴えるNPO「原子力資料情報室」に在籍したこともある原子炉工学や原子炉政策の専門家だ。

 勝田准教授は「屋外でも毎時10シーベルト超の汚染なら、炉心近くはもっと高いはず。燃料は溶けて、冷却も安定してできていない。放射線量が十分下がっていない5年や10年で作業を始めれば、作業員に健康被害が出る恐れがある」。炉の燃料がどこでどのような形で溶けたか、実際に燃料を取り出せるかを判断するだけで少なくとも10年かかるとみる。解体作業をするとしても、終了まで50年かかってもおかしくない、というのだ。

 今、勝田准教授の念頭にあるのは、チェルノブイリ事故で行われた「石棺」。溶けた燃料をコンクリートの巨大な壁で覆う方法だ。勝田准教授は「あれだけ放射性物質に汚染された4基を同時並行でどう解体するのか。日本は廃炉経験が少ないうえ、通常の廃炉の仕方とも全く異なる。更地に戻すことは現実的ではない。石棺や建屋をドームで覆う方法も考えたほうがよいと思います」と指摘する。

 廃炉費用については「汚染がひどい放射性廃棄物が膨大で原発の建設費(1基3000億~4000億円)まではいかないが、それに近い数字になるのでは」と推測する。

 いずれにしろ「人類の未知の領域」であることは間違いない。

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毎日新聞 2011年8月22日 東京夕刊
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