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「フクイチ」をめぐる「耐震偽装工作」疑惑

世界的な調査報道ジャーナリスト、グレッグ・パラスト氏 新著で暴露! フクイチの耐震設計 436ガル 3・11では最大550ガルの揺れが襲う 東電 600ガルへの耐震強化を5年前に「約束」 (つまりフクイチは地震に脆い原発だった!?)

 米国の世界的な調査報道ジャーナリスト、グレッグ・パラスト氏の新著、『ハゲタカのピクニック』で、東電による「フクイチ」をめぐる「耐震偽装工作」疑惑の姿が急浮上した。

 本ブログでは、パラスト氏が同書刊行に先立ち、ネットで先行公開した関係個所の一部(この記事の末尾に再掲)をすでに紹介し、新著の刊行が待たれるとしていたが、予約注文していた同書が本日、筆者(大沼)の手元に届いたことから、疑惑のより詳しい中身が分かった。


 パラスト氏が同書の第9章、「フクシマ、テキサス」で指摘している疑惑の中で最も注目されるのは、「フクイチ」が最大加速度、436ガルの地震に耐えられる設計基準で設計されていたことだ。
 (以下、同書283頁に内容)

 そこに、3・11の地震が襲った。

 2号機の揺れが最も激しく、550ガルに達した。

 東電やニューヨーク・タイムズによると、この地震は耐震安全基準を20%超えるものとされた。

 (これはパラスト氏が書いていないことだが、東電や日本政府の公式ストーリーによると、安全基準を20%も超えた激しい揺れにもかかわらず、「フクイチ」はこの地震に耐え切った。地震には耐え抜いたが、想定外の大津波にやられた……政府はこの線で、IAEAに対して事故報告書を出している……)

 3・11の地震はフクイチの耐震安全基準を20%超える……パラスト氏はこの説明を鵜呑みにしなかった(買わなかった)。

 技術的な文書を漁って、真実を突き止めた。

 東電のフクイチはそもそも、436ガルで耐震設計していいものではなかった!

 そして東電自身も436ガルの耐震設計では、(大地震の際)原発が持たないことを分かっていた。

 パラスト氏が確認した古い技術的な文書によると、東電はしかも、フクイチの耐震性を600ガルまで引き上げることを、日本政府の監督機関に「約束」していた。

 5年前に!

 (約束はしていたが、耐震強化はしていなかった?! ……そして、今回の破局的な結末に)

 パラスト氏は、こう書いている。「東電が政府の監督機関をもて遊ばなければ、日本は今回のような『スローモションのヒロシマ』に遭わずに済んだろう」――と。

 耐震性を600ガルまで上げていれば――東電と政府がシラを切っている地震による損傷は避けられたはず。

 その意味で、このパラスト氏の指摘な重大な告発と言わねばならない。

 さて、当時を振り返ると、東電は事故後、「想定耐震基準は600ガル」という説明の仕方をしていた。(あくまでも想定の耐震基準!)

 これとパラスト氏の指摘を重ね合わせると、東電はそう「想定」してはしていたものの、耐震強化の工事は行わず、そのレベルまでいずれ耐震性をアップしますと、ただ「約束」しただけの状態で、結局は436ガルで3・11を迎えたということになる……。

 さて、ここからもまた、パラスト氏の新著に(直接的には)書かれていないことになるが、東電が5年前、日本の監督機関に600ガルへの引き上げを「約束」していた裏には、以下のような重大な疑惑が隠されているような気がする。

 それは、「フクイチの耐震性が436ガルでしかないのに、600ガルあります――と、日本政府の許認可機関に虚偽の耐震報告(SQ)が行われていたのではないか」との疑惑だ。

 私(大沼)がこう思うのは、パラスト氏が同書刊行に先行してネットで公表していた、フクイチの同型原子炉の米国「ショーラム原発」をめぐる耐震偽装工作の実例があるからだ。(下記の本ブログ既報を参照)

 もしかしたらフクイチも、SQを600ガルと偽装して建設認可を取り付け、建設後、その事実があとで発覚して、政府の監督機関から是正を迫られていたのかもしれない。

 そうだとすると、ウィキリークスの米国務省機密電暴露で明らかになったように、米政府があれほど日本の原発に危機感を燃やしていたことや(拙著、『世界が見た福島原子力災害』 緑風出版)、日本政府・東電が「メルトスルー」などというとんでもないことを言い立てて、その衝撃のドサクサにまぎれて、フクイチの事故原因追究の動きをかわそうとした(同、『世界が見た福島原子力災害 2 死の灰の下で』、同)理由がハッキリして来る。

 パラスト氏の調査報道から今回、見えて来たもの――それは、地震国・日本の、地震の巣の前に据えられたフクイチという原発が、実は耐震性のない、脆い原発であったという、悲しすぎる「現実」だ。

 政府の事故調は――そして日本のマスコミは、パラスト氏にインタビューし、資料提供も受けて、フクイチ事故の真相究明にあたらなければならない。

                  ★

 ☆ 参考  本ブログ既報 再掲 26日付 ◇ →http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2011/11/post-aa0b.html

 【フクイチ「耐震証明」を偽造 調査報道ジャーナリスト グレッグ・パラスト氏が最新著『ハゲタカのピクニック』で指摘 同型のニューヨーク・ショーラム原発も「耐震基準」をクリアせず 偽造してNRCに報告】
 → http://www.gregpalast.com/completely-and-utterly-fail-in-an-earthquake/

 ニューヨークを拠点に活動する世界的な調査報道ジャーナリストのグレッグ・パラスト(Greg Palast)氏が、最新刊のレポート(新刊書)、『ハゲタカのピクニック( Vultures' Picnic)』の中で、フクイチ原子炉の耐震証明が偽造されていた、と指摘していることが分かった。

 パラスト氏自身が同書の発売に先行して、この問題にかかわる同書の部分をネットと公開したためだ。

 「フクシマ:彼らは知っていた(Fukushima: They Knew)」と題されたネット公開文書(11月10日付)には、《「地震で完全・完璧に損傷」 CNNでは分からないフクシマ・ストーリー》との見出しがついている。

     #

 パラスト氏が「フクイチ」の耐震証明問題を取り上げたのは、ニューヨーク郊外のロングアイランドに建設された(運転開始を前に住民の反対運動で廃止された)、フクイチと同じGE社製原子炉の「ショーラム原発」が、実は耐震基準(SQ=Seismic Qualification)をクリアできていなかたことを――にもかかわらず、SQをクリアしたとNRC(米原子力規制委員会)に虚偽の報告をしていたことを突き止めていたためだ。

 パラスト氏は「ノートブック」と呼ばれる証拠の内部文書を入手・保管している。

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 さてパラスト氏が、その「ノートブック」を書いた、原発の建設会社( Shaw Construction 現在はStone & Webster)の上級エンジニアのディック氏と、その部下で同社の耐震検査員(地震専門家)であるウィーゼル氏の2人を呼び出し、SQ偽造問題の取材をしたのは、(チェルノブイリ事故があった)1986年のことだった。

 場所は、あの「9・11」で倒壊したニューヨークの世界貿易センター(WTC)のタワーの52階。
 遠くに「自由の女神」が見える部屋でのことだった。

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 2人は、パラスト氏とその調査スタッフに対し、会議テーブルの上に関係資料を広げて見せたそうだ。

 「ノートブック」も、そのひとつ。

 上司のディック氏が部下のヴィーゼル氏からの「ショーラム原発」の関する耐震検査報告を受け、記録文書(フィールド・ノート)として書きとめていた。

 パラスト氏はこの「ノート」を、WTCが崩壊する「9・11」以前に持ち出して保管していた。

     #
 
 「ノート」にはこう書かれていた。(以下、要約)

 「ウィーゼルは気を動転させていた。ナーヴァスになっていた。ウィーゼルは言った。『これはひどい(耐震検査の)結果だ。(NRCに)報告しなくちゃならないものだ』。そして彼は連邦政府の規制法令集を取り出し、50.55セクションを指差した。そこに報告しなければらない原発の欠陥が書かれていた……彼は報告したら、会社を解雇されるのではないかと心配していた。しかし、報告しなければ、連邦法を犯すことになる……」

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 結局、ウィーゼル氏とデイック氏の2人は、会社の上層部からの指示もあり、「ショーラム原発」がSQをクリアしているとして、ウソの報告をNRCに対して行ったという。

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 さて、この「ショーラム原発」の件と「フクイチ」が、どこでどうつながるか――ということだが、ひとつは、すでに述べたように原子炉が同じGE社製の沸騰水型原子炉であるということ。

 もうひとつは、グレッグ・パラスト氏によると、「フクイチ」を建設したのが、「ショーラム」と同じ、ディック、ウィーゼル両氏が勤めていた「Shaw Construction」であるということだ。

 (この点は要確認である。もしかしたら「フクイチ」もまた、この Shaw Construction社が日本の当局に対して、SQクリアの証明書を出していたかも知れない……)

 「ショーラム」は1973年に着工、84年の完成。「フクイチ」とほぼ並行して建設が進められた原発だ。

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 ここでもう一度、地震検査員、ウィーゼル氏の「ショーラム原発」耐震検査に戻ると、検査の結果は「大半の機器が地震の際、完全・完璧に損傷する( most of these components could "completely and utterly fail" during an earthquake.)」という、とんでもないものだった。

 これはまるで「フクイチ」の悲劇を予言したような検査結果ではないか!

 実際問題として、「フクイチ」では津波の前に地震の揺れで損傷した疑いが持たれているし、柏崎もまた地震で爆発寸前まで追い込まれたことは、なお記憶に新しい……。

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 パラスト氏はことしの3月12日(米国では時差があるので……)、フクシマがメルトするのを目の当たりにした時のことを、新著『ハゲタカのピクニック』で、こう書いている。
 

 私は知っていた。フクシマの「SQ」が偽造されたものであることを。
 On March 12 this year, as I watched Fukushima melt, I knew: the "SQ" had been faked.

 そして、私は吐きそうになった。
 I was ready to vomit.

 吐き気がしたのは、フクシマを建設したのが、あのShaw Construction社であることを知っていたからだ。
 Because I knew who had designed the plant, who had built it and whom Tokyo Electric Power was having rebuild it: Shaw Construction.

     #

 疑惑の提示――というよりも、疑惑を断定したような……いや、耐震偽装を断定したパラスト氏のレポートぶりではある。

 「耐震偽装」されていた「フクイチ」!……

 これは重要な証言である。日本のマスコミは(あるいは政府事故調は)、パラスト氏から詳しく事情を聴くべきではないか!

     #

 「ショーラム原発」でのSQ偽装のことを知っていたからパラスト氏は、東京に飛んだCNNのアンカー、アンダーソン・クーパー氏の、(おそらくは東電の説明を真に受けた)「フクイチは震度8まで耐えられる設計だったが、今回の地震は震度9だった」とのレポートを見て、眉をひそめたのだ。

 震度9は震源での震度。(パラストのサイトの記事にあるように)フクイチの現場では震度8を下回っていた……。

     #

 プラスト氏は新刊書の発売に先行して明らかにしているのは、以上、これまで――ここまでである。

 『ハゲタカのピクニック』には果たして、これ以上の「衝撃の真実」が書かれているのか?

 手元に本が届き次第、報告するが、今回、パラスト氏がネットで先行公開した部分だけ読んでも、「フクイチ」の耐震性に対する疑問は膨らむ。

     #

 プラスト氏のいう「ハゲタカ」とは、金もうけのためなら何でもする強欲のメタファーだ。

 「ハゲタカ」たちは、もともと「耐震性」のないものを、地震国・日本に持ち込んで、地震の巣の前に据え付けたのだろうか?

Posted by 大沼安史 at 05:49 午後 | Permalink
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tomo

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ジャーナリスト、池田知隆のブログです。最近の記事、イベント情報などを掲載しています。

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