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ニューヨークタイムズ: 訳の分からない放射能除染 (記事全訳)

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Saturday, February 18, 2012
ニューヨークタイムズ: 訳の分からない放射能除染 (記事全訳)

日雇いの労働者は放棄された学校の窓を拭きながら、彼の作業グループの行き当たりばったりの仕事振りにしょうがないとばかりに肩をすくめる。「みんな素人だからね」、と彼は言う。「放射能をどうやってきれいにするか、誰も本当のところ知らないんだ。」

何の資格も技能も無い日雇いの労働者でも、一日に2万5千円稼げる除染は大きなビジネス、とレポートしたのは、2012年2月10日付けのニューヨークタイムズ紙のタブチ・ヒロコ記者。以下に、私訳をお届けします。長い記事なので、英文の元記事の文章は省略させていただきました。

元記事: ”A Confused Nuclear Cleanup” (2/10/2012) By Hiroko Tabuchi

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2012年2月10日ニューヨークタイムズ

訳の分からない放射能除染

タブチ・ヒロコ

飯舘村 - 福島第1原発から20マイル(約32キロ)のところにあるこの村に、ハズマットスーツを着てマスクをつけた作業員500人が散開し除染を行う。彼らの困惑は明らかだ。

「5センチ掘るんですか、それとも10センチ?」現場監督はは同僚に聞きただし、取り除く予定の表土を指差す。その後、村の広場の向こうにある公民館を指して、「あれは取壊すんじゃなかったですか?除染するんですか、しないんですか?」

日雇いの労働者は放棄された学校の窓を拭きながら、彼の作業グループの行き当たりばったりの仕事振りにしょうがないとばかりに肩をすくめる。「みんな素人だからね」、と彼は言う。「放射能をどうやってきれいにするか、誰も本当のところ知らないんだ。」

確かに、誰も本当のところを知らないのかもしれない。しかしそれしきの事で挫ける日本政府ではなかった。手始めとして、政府は130億ドル(1兆円)分の契約を発注し、8000平方マイル(2万720平方キロ)を超す、放射性降下物に最もさらされた地域 - 米国のニュージャージー州と同じ広さ - を再生しよう、というのだ。最大の目標は、昨年3月の原発事故現場の近くに住んでいた8万人以上の住民が帰還できるようにすること。その中には飯舘村の6500人の村民も入っている。

ただ、その除染方法が効果的であるかははっきり分かっていない。

除染プログラムを批判する人々にとって更に気がかりなのは、政府が最初の契約を発注した先が大手ゼネコン3社であったことだ。放射能除染の専門知識・経験が飛びぬけてあるわけでもないのに、日本政府の原発推進で大いに利益を上げてきたのが大手ゼネコン会社、というわけだ。

市民の監視グループである原子力資料情報室によると、このゼネコン3社で日本にある54の原発のうち45を建設している。そのうちの1つ、福島第1原発では、原子炉建屋やそのほかの発電所は津波に耐えることが出来ず、壊滅的な機能不全に陥った。 【訳注:ニューヨークタイムズの記者は原子力発電所と原子炉を混同している模様。54あるのは原発ではなく、原子炉。ニューヨークタイムズには記載が間違っている旨メールしましたが、返事なし。】

3社のひとつが大成建設で、ジョイントベンチャーの元締めであり、今飯舘村にハズマットスーツを着た作業員を送り込んでいる。大成のジョイントベンチャーと他の2社、大林建設と鹿島建設が元締めのジョイントベンチャーの3つで、最初の12の政府除染実験プロジェクト合計9千3百万ドル(約74億円)を受注した。

「詐欺ですよ」と言うのはサクライ・キヨシ氏。原子力業界を批判する氏は、日本原子力研究開発機構の前身機関の研究者だった。日本原子力研究開発機構は現段階での除染を総括している。「除染はビッグ・ビジネスになりつつあります。」

除染契約は原子力業界と政府の間に長い間存在してきたなれあいの関係を象徴するものだ、とサクライ氏などは批判する。

「日本の原子力業界は失敗すればするほど金を多くもらえるように出来ている」、とサクライ氏は言う。

日本原子力研究開発機構は、ゼネコン大手が今後も大半のプロジェクトを受注するとは限らない、と言っている。今後のプロジェクトの発注を行うのは環境省になる。しかし、大手ゼネコン側は今後も元締めとして参画し続けるつもりであることをほのめかしている。

「実際に作業しながら経験を蓄積しているのです」、と言うのは、大成の広報のヒライ・フミヤス氏。「試行錯誤のプロセスですが、私たちには除染の仕事をやっていくのに十分な能力があります。」

鹿島と大林は、現在進行中のプロジェクトについてはコメントできない、と言っている。


環境省のセイマル・カツマサ氏によると、大手ゼネコン各社は必要な作業員をあつめることが出来、道路、山林の除染など大規模なプロジェクトをまとめる力があり、除染作業員をきちんと被曝から守り、被曝を監視する能力が一番高い、という。

「原発推進だったかどうかではなく、除染に何が出来るかが重要なのです」、とセイマル氏は言う。

他のゼネコンも何とかして一枚加わろうと必死だ。1月の末、前田建設が環境省から除染契約を受注した。前田建設の入札価格は予想されるコストの半分以下で、明らかに損失覚悟で足がかりを掴もうとする手口に対して大成を含む他の入札者から苦情が出た。【訳注: 楢葉町役場周辺の除染プロジェクトで前田建設の入札価格は大成、大林の10分の1。コストの半分、という情報はどこから来たのか不明。前田建設の次に低い価格を提示したのは清水建設。詳しくは朝日新聞1月22日付け記事ご参照。】

今月の初め、警戒区域のすぐ外側の南相馬市は、大手ゼネコングループに発注する除染プロジェクトに400億円(5億2500万ドル)を計上すると発表した。議論はさておいて、日本が重要な作業を行っていることには間違いない。この作業は1986年ウクライナのチェルノブイリ原発事故の後に行われた部分的除染をはるかに超える予定だ。チェルノブイリでは、原発から半径19マイル(約30キロ)の地域が事故後4半世紀が経った現在でも、ほとんどが立ち入り禁止のままになっている。

しかし、どのような除染方法が日本で有効なのかについてはほとんど合意がない。放射性物質は風や雨で簡単に移動し、一度除染作業が終わってからも町を再汚染するかもしれない、と専門家は言う。

「除染の専門家はまだ存在しません。国が大手ゼネコンに大金を払わなければならない理由などないのです」、と言うのはタオ・ヨウイチ教授、工学院大学の物理学の客員教授だ。教授は飯舘村の村民が除染方法を自主テストするのを手伝っている。彼はまた、エネルギー庁の除染プロジェクトの効果の有無を監視している。

主契約を受注するのは大手ゼネコンでも、実際の除染 - 単純だが手間のかかる、ごしごしこすったり穴を掘ったりする作業 - は多くの下請けや孫請け会社が行い、更にこれらの会社は、一番ひどい除染作業を行うのに訓練されていない日雇いの労働者に頼っている。

下の階層へ行くにつれて手数料がピンはねされ賃金が低くなっていく、というこの階層構造は、日本の原子力業界、建設業界ではおなじみのパターンだ。

飯舘村のプロジェクトの作業員はほとんど地域外から来ている。学校の窓を拭きながら自分で素人だと認めた作業員、シバタとだけ名乗る彼はもともと自動車工で、160マイル(約257キロ)離れた千葉に住んでいるのだ、と言う。「見入りがよくてさほど危険でない」仕事が福島である、というニュースに飛びついたと言う。

シバタさんは一日に4時間シフトを2つやっている、と言う。寝泊りするのは近在[地元?]の温泉リゾートだ。シバタさんや同僚の作業員は賃金の話をするのを断ったが、地元のニュースによると除染作業の賃金は一日2万5千円、およそ325ドルになる、という。

ペーパータオルで窓を拭きながら彼は言う。「タオル一枚で拭くのは一度。さもないと、放射性物質がただ広がるだけだからね。放射線が見えるわけじゃないけど。」

その通り。昨秋、飯舘村公民館の同様の除染プロジェクトは村によって行われたが、放射線を安全なレベルまで下げることは出来なかった。

大成、ゼネコン各社によるパイロット事業は早くも思わぬ障害にぶつかっている。日本政府は、汚染された庭や畑からそぎ取った大量の汚染土を[地元で]保管しておくことへの住民の抵抗を予期できなかったのだ。

一方、政府・ゼネコンの除染プロジェクトを批判する人々は、地元の会社や自治体の方が除染を安上がりに行うことが出来、地元の雇用創出にもなる、と言う。

飯舘村の住民の中には、大学の専門家の手を借りて自分たちで何とかしようとし始めている人々もいる。彼らの実験によると、除染はまず飯舘村の面積の4分の3を占める山林から始めなければならない、とのことだ。

「うちを除染してもらっても、放射能はまた山から降ってくるからまた全部汚染される」、と言うのは、農業を営む60歳のカンノ・ムネオさんだ。他の飯舘村の住民と同じく、カンノさんも原発事故から1ヶ月以上村に留まっていた。放射能雲が飯舘村に到達しているのを知らなかったのだ。

カンノさんは5月に村から避難したが、週末には帰村していろいろな除染方法を試している。最近は物理学者のタオさんを伴って近くの山に行き、枯葉を地面から取り除くことでどれだけ放射線が下がるかを実験している。

彼らの作業には公的資金は出ていない。すべて寄付と、村人たちの無償労働で支えられている。つい最近でも、70歳の人々数人を含む10数人のボランティアが朝、雪の積もった山林に入って枯葉を掻き出し、布の袋に詰めていた。普通の服にマスクをしただけの格好だった。

「この土地のことはゼネコンより私たちのほうがよほど良く知っている」、とカンノさんは言う。「金は跡形も無くどこかに消えているんじゃないかと思うよ。」

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記事に付随しているスライドショーはこちら。


飯舘村の土壌からは、ネプツニウム 、プルトニウム が検出されています。飯舘村のジョロウグモは体内に放射性銀を濃縮していました。去年の4月当初、IAEAは村の土壌からキロ当たり2千万ベクレルのヨウ素131を検出した、と発表しています。

飯舘村で4時間シフトを2回、合計8時間働くと、記事に登場したシバタさんの被曝量は空間線量が平均で毎時5マイクロとして、一日で40マイクロ、一週間(実働5日として)200マイクロ、1ヶ月で800マイクロ。アルファ線、ベータ線核種からの被曝の可能性を考慮に入れると、実際はもっと高い被曝である可能性があります。

日雇い労働者に「さほど危険ではない」仕事、と嘘をついてまで、飯舘村を始めとした計画避難区域、警戒区域の高汚染地域の「除染」をすることが、そんなに必須のことなのでしょうか?それとも、労働者を「放射能スポンジ」(Radiation sponge)
として使っている、とでも言うのでしょうか?


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Posted by arevamirpal::laprimavera at 9:30 PM
Labels: ニューヨークタイムズ, 放射能汚染, 除染, 飯舘村
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tomo

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ジャーナリスト、池田知隆のブログです。最近の記事、イベント情報などを掲載しています。

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