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電力システムを“硬直的で脆弱”から“自律分散型”へ 送電網の開放と公正な電力取引市場の創設が急務



電力システムを“硬直的で脆弱”から“自律分散型”へ
送電網の開放と公正な電力取引市場の創設が急務

ダイヤモンドオンライン2012年3月28日
http://diamond.jp/articles/-/16801
【第17回】 2012年3月28日
高橋洋〔富士通総研 主任研究員〕


たかはし・ひろし/1993年ソニー入社、2000年内閣官房IT担当室主幹、2007年東京大学先端科学技術研究センター特任助教、2009年より現職。学術博士。経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員、同電力システム改革専門委員会委員。著書に『電力自由化 発送電分離から始まる日本の再生』 (日本経済新聞出版社、2011年)など。

 電力といえば、黙っていてもコンセントの向こうまで来ていて、いつでも好きなだけ使えるもの。引越しをしても契約する電力会社(一般電気事業者)は予め決まっており、電力には色も臭いもなく質は均一だから、何も頭を悩ませて選ぶ必要がない。日本の電気料金は国際的に見ればやや高いそうだが、それさえ我慢すれば何も心配しなくてもよい。日本のエネルギー自給率は低いが、技術力を活かして原子力発電を行っているから安定供給上の心配もないらしい1。事実、世界で停電時間が一番短いのは日本である。

 2011年3月の福島第1原発事故が起こる以前に、日本人の多くは電力に対してこのようなイメージを持っていたのではないだろうか。電力は、水か空気のようにあって当たり前のものであると。しかし3.11後の経験を経て、そのイメージは大きく変わってしまったはずだ。既存の電力システムには大きな脆弱性が内包されており、構造改革が必要なこと、その実現のためには我々個々人が電力に強い関心を持ち、意思表示をしていかなければならないことを、今や多くの人が感じているのではないだろうか。

3.11の教訓とは

 3.11によって、何が引き起こされたのか。多くの人が、放射能を撒き散らして地域住民を苦しめる原発はもう止めて欲しいと思っただろう。もちろん現実には、原発を止めれば電力が足りなくなり停電が起こる。停電が起こらなくても電気料金が跳ね上がる。火力発電が増えて温室効果ガスも増えるため、脱原発など夢物語として諦めている人が少なくない。ただ、再生可能エネルギー(再エネ)という言葉も含めて、電力を作るエネルギー源である電源への関心が高まったことは間違いない。電力は全て同じではなく、できることならば、自分で電源を選びたいと。

 そう、今の日本では需要家が電源を、電力会社を選べないことも、問題視されるようになった。電力会社が停電を引き起こそうが、突然大幅な値上げを表明しようが、競合他社に乗り換えることはできない。これが地域独占である。

1:資源エネルギー庁『エネルギー白書』2010年度版によれば、日本の1次エネルギー自給率は4%、「準国産」の原発を加えて18%である。



 実は電力小売り市場の6割は自由化されており、企業などの大口需要家であれば、新規参入者である新電力(特定規模電気事業者)から、あるいは他地域の電力会社から電力を買うことができる。しかし、全電力市場に占める新電力のシェアはわずか1.8%程度に過ぎない。「象とアリ」では競争にならないが、「象と象」では競争になるはずである。しかし、電力会社同士の独占地域をまたいだ競争は1件しか実績がない2。従って、自由化分野でも実質的に選択肢はないに等しい。3.11後に新電力には問い合わせが殺到したというが、東京電力管内では託送業務3が停止されたこともあり、大規模な乗り換えは起きなかった。

 そして1800万世帯を対象とした大規模な計画停電が起きた。これにより、現代日本社会でも停電が起きること、そうすれば経済社会が麻痺することを痛感させられた。

 なぜ計画停電が避けられなかったのか?直接的原因は地震・津波によって福島第1原発などが被災したためだ。しかしより本質的な原因は、福島第1・第2だけでなく、広野や鹿島といった大規模火力発電所が太平洋岸に集中立地していたことにある。原発に代表される大規模集中型電源は、どうしても過疎地に集中立地するため、その地域で大規模災害が起これば電源の多くが一度に被災し、致命的な供給力不足が引き起こされるリスクが高い。これも想定外だったのだろうか?

60年前から続く
地域独占のツケ

 計画停電のもう1つの原因は、他地域の供給力には余裕があったにもかかわらず、十分な量を東京電力管内に送電できなかったことにある。

 東西の周波数の問題もあり、地域間送電網の建設を怠ってきたツケが、このような形で現れた。電力に限らずネットワークインフラにおいては、その規模が大きければ大きいほど効果が高まる(ネットワーク外部性)。これは通信でも鉄道でも当たり前の話なのだが、電力では10の地域別に需給調整を行うことが60年前から大前提となり、地域間の電力融通は僅かしか行われてこなかった。これも地域独占の弊害であり、送電網の全体最適を考える主体がいないことが問題の根底にある。これまで電力会社は、「安定供給」を至上命題に掲げて電力自由化に反対してきたが、地域独占や発送電一貫こそが、安定供給を阻害したのではないか。

2:2012年3月6日に開催された総合資源エネルギー調査会電力システム改革専門委員会で、この地域間競争が生じない点が取り上げられ、オブザーバーとして出席していた電力会社に対して質問がなされたが、需要家が期待する価格が低すぎて応じられないとの回答だった。しかし、同委員会で配布された需要家アンケート調査によれば、そのような理由による他地域からの供給の断念は12%に過ぎず、3分の2以上が「地元の電力会社以外の電力会社が十分な情報を提供しなかった」との理由であった。
3:電力会社(一般電気事業者)が新電電に送電網を貸し出すこと。



 しかし、実は悪いことばかりではなかった。需要家が一致団結して節電・ピークシフトに励んだ結果、2011年夏の供給力不足は大きな混乱なく克服できた。これまで電力会社は、需要側の対応力(デマンド・レスポンス)には期待できないと説明してきたが、大きな可能性があるということが証明された(図表1)。

 とはいえ、現実には大口需要家の負担は大きかった。企業によっては、自家発電機の増設やその燃料費の増加により、数億円規模の負担がかかったという。そのため2011年の節電は、3.11を受けた緊急事態における需要家の例外的な対応であり、今後は期待できないとの声もある。確かに、一律15%削減義務付けといった画一的なやり方を続ければ、誰もレスポンスしてくれなくなるかもしれない。しかし、十分な需給情報とインセンティブを与えれば、需要家は自ら考えて積極的に需給調整に協力してくれるのではないか。これが、スマートグリッドの基本的な考え方である。



集中管理型から自律分散型へ

 筆者は、これまでの日本の電力システムを「集中管理型」と呼んでいる。限られた数の電力会社が、発電から送電、配電、小売りまでシステム全体を一手に引き受ける。原発に代表される大規模発電所を過疎地に集中立地し、合わせて高圧送電網や揚水発電も一体的に建設し、制限なく需要家に送り届ける。市場競争がないから相対取引で認可料金が当たり前で、需要家が電気料金を払う対象も電力会社になる。安定供給責任は全面的に電力会社に課されるため、電力会社は十分な供給力を持てるよう過剰投資も厭わず、それは総括原価方式の料金により確実に回収される。

 集中管理型システムの最大のメリットは、需要家は何も考えなくても良いということである。冒頭で選択肢がないことを批判したが、実はそれは何も悩む必要がないということであり、慣れてしまえば心地よかった。

 と同時に、日本の停電時間は世界で一番短いこともよく指摘される。これについては、電力会社の日々の努力を率直に評価したい。だが、それが発送電一貫体制、とりわけ地域独占のお陰だとの意見には同意できない。地域単位で需給をバランスさせるという、ネットワークの力をまるで活用しない仕組みだったからこそ、計画停電が避けられなかったのだ。また、上記の通り、電力会社は地域単位で過剰投資をしてきたからこそ、電気料金の水準も日本は未だに世界一なのである。



電力システムを“硬直的で脆弱”から“自律分散型”へ
送電網の開放と公正な電力取引市場の創設が急務



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 そして今、集中型電源依存の立地リスクが顕在化すると共に、送電網を広域運用しないことが裏目に出た。また、電力会社が市場を通さずに、つまり需要者の都合や意思を踏まえずに需給調整するため、そのやりかたは柔軟性に欠け、このままではスマートグリッドの実現も覚束ない。今こそ、集中管理型システムを自律分散型へと構造改革しなければならない(図表2)。



分散型電源導入が
電力システムを変革させる

 では、自律分散型とはどのような電力システムなのか。

 第1に、供給面では様々な分散型電源が導入される。その代表選手は再エネだ。再エネは、風力、太陽光、地熱、バイオマス、小水力など、それ自体が多様である上、立地が分散される。そもそも再エネは地域に応じて偏在しており、設備さえあればどこでも発電できるというものではない。だからこそ、地域特性が活かされる。そして立地集中リスクが下がれば、いざ事故が起きた時にも供給力不足の危険性は下がり、地域住民の被害も限定される。

 と同時に、再エネによる発電主体が多様な点も重要である。原発のような集中型電源を新規参入企業が建設することは事実上不可能で、自由化されたとはいえこれまで発電設備を建設するのは大手電力会社が中心だった。しかし再エネは、小規模かつ基本技術が確立されたものであるため、誰でも手掛けられる。

 さらに、分散型電源とは再エネだけではない。もともと分散型電源という言葉は、工場の自家発電機や地域のコジェネレーション(熱電併給システム)などを指していた。電力会社以外の主体が需要地に近いところで自給のために発電するものだったのであり、電力システムの一部という認識は薄かった。しかしこれらが電力システムの重要なプレーヤーとして統合されれば、これまでの供給者・需要家という画一的な見方に修正が求められる。



需要家の自律化で
サービス市場が育つ

 第2に需要面では、需要家の自律的な行動が活性化される。これまで需要家は選択肢を与えられなかったため、自ら考えて自由な消費行動を取れなかった。今後は、需要家が価格インセンティブに基づいて供給者を選別したり、原発ではなく再エネを選択したりできるようになる。

 需要家が自律化すれば、そこには様々なサービスが生まれる。これまで電気事業においてサービスと言えば、画一的な形式と料金で電気を送り届けることだけだった。電気がいつでもコンセントから使えることが、唯一のサービスだった。しかしここでいうサービスとは、それ以外に多様な付加価値が加わることを意味する。ピークシフトなどのデマンド・レスポンスを促すためには、多彩な料金メニューが鍵になる。節電だけでなく地球温暖化のためにも、エネルギー・マネジメント(HEMS/BEMS)が重要になる。EV(電気自動車)が本格的に普及すれば、その蓄電池が電力システムに統合され、V2GやV2Hなど様々な可能性が広がる4。これらを需要家だけで行うことはできないので、第三者であるサービス事業者が活躍する余地が広がる。

発送電分離が不可欠

 これら、供給の分散化と需要の自律化が進む前提として必要なのが、公正に開放された送電網と電力取引市場である。第1に、需給両面でプレーヤーが多様化して競争が起きるためには、全員に必要なネットワークインフラを特定のプレーヤーに支配させてはならない。今後の送電網は、適正な条件で誰もが自由に使えるようになり、と同時に全体最適を考えて拡充していかなければならない。このため発送電一貫の電力会社から送電部門を切り離すのが、発送電分離である。

 現在の日本の電力システムは発送電一貫である。今後も独占が続く送電網を所有するプレーヤーが、発電事業では競争している。送電網を自由に使わせることは、競合他社に「塩を送る」ことになる。自社の原発を建設する際には、どんなに過疎地であっても悩むことなく高圧送電網を建設するが、他社が風力発電を建設する際には、送電網を建設しない、送電網があっても接続させないインセンティブが働く。ヤマト運輸が「道路」を所有していれば、佐川急便のトラックを通行させないのは当たり前であろう。

 送電部門を切り離すにはいくつかの方法がある。例えば、持ち株会社の下で別会社化すれば、同じグループの他社を優遇するインセンティブは下がる。これを「法的分離」というが、通信における現在のNTTはこの形態に当たる。「運用分離」とは、所有権に手を加えずに需給調整などの系統運用を公的な中立機関(ISO)に委ねる方法で、アメリカで頻繁に見られる。欧州で一般的なのが、「所有権分離」である。競争分野の事業者による送電網の所有を認めず、完全に売り払うことを要求する。独立した送電会社(TSO)が誕生し、送電網の所有者が系統運用も担うことで、安定供給責任が明確化されると共に長期的投資も確保される5。送電網の開放という観点からは所有権分離が理想的だが、民間企業の私的所有権と衝突するため、交渉と調整が必要になる。

4:V2GとはVehicle to Gridの略称で、EVの蓄電池に貯めた電力を送電網に流すこと(売電)を意味する。同じく、V2H:Vehicle to Homeは、EVから家庭への給電を意味する。
5:アメリカ型のISO方式では、送電網への設備投資を行うのは所有者である発送電一貫の電力会社である。しかし自ら運用できない設備への投資意欲は低く、その結果送電網が老朽化し、頻発する停電の一因と言われている。欧州型のTSO方式では、停電に対するペナルティも送電会社に課されるため、自らの問題として設備投資が進み易い。



公正で健全な
電力取引市場の必要性

 第2に、送電網が物理的インフラだとすれば、取引市場は経済的インフラである。上記のように多様な主体が経済的に繋がるためには、自由市場が十分に機能しなければならない。発送電一貫体制では、発電も送電も小売りも所有権を一にする主体が責任を持っていたから、計画経済で良かった。換言すれば、各機能の間の調整作業は内部化され、電気料金はどんぶり勘定だった。しかし、発電のみ、送電のみ、小売りのみを別々の主体が担う形態が普通になれば、それぞれの機能に適正な価格が付き、取り引きがなされなければならない。それを行えるのは市場だけである。

 そもそも市場の基本的機能とは、需給調整である。市場では多数の需要と供給が集まり、価格が時々刻々と変動する。だからこそ需要と供給がバランスされ、資源配分が最適化される。電力の世界では「同時同量の原則」が働き、需給調整が極めて重要だからこそ、市場メカニズムを活用すべきである。

 日本でも2005年に卸電力取引所(JEPX)が設立されたが、そのスポット市場の取引量は日本全体の0.5%に過ぎない。圧倒的規模を誇る電力会社が取引所を通さずに相対取引を続けているため、市場規模が広がらない。自治体が運営する水力発電所なども電力会社との随意契約が続いており、新電力が競争入札で電力を調達したくてもできないという。市場は大きければ大きいほど効率性を増す。公正な競争が行える市場になれば、プレーヤーが増えて規模も拡大し、機能は高まる。

欧州の再エネ大量導入と
発送電分離

 筆者の「自律分散型」のアイデアは、遠い未来の夢物語のように思われるだろう。実は欧州では、この方向に向けて着実に改革が進められている。政府と電力会社が協力して、夢物語を少しずつ実現しつつあるのだ。

 第1に、欧州では再エネの大量導入が進んでいる(図表3)。デンマークでは、国策でありながら地域住民の主体的な関与の下で、風力発電の建設を推進してきた。地域住民が少しずつ資金を出し合い、風力発電所を共同所有することにより、立地上の抵抗との妥協を図ってきた。

 ドイツではフィードインタリフ(電力の固定価格買取制度)により、発電コストが高いという再エネの問題点を解消してきた。それは再エネをただ補助金漬けにしたのではなく、大きな量産効果が発揮され、太陽光パネルの価格は着実に下がってきた。再エネは温室効果ガスを排出しない上、「純国産」でエネルギー安全保障上も理想的な電源であるため、これら正の外部性を評価して国を挙げて推進してきたのである。





 第2に、市場開放が進んでいる。北欧4カ国は電力卸取引市場をノルドプールとして統合し、国境を越えた電力取引を日常的に行っている6。需要と供給は日々市場での入札によってバランスされ、変動する電力価格が需要家に節電インセンティブも与えるため、資源配分の効率化が実現されている。

 ドイツでは1998年に小売り市場の全面自由化が実現され、今ではウェブサイトから簡単に小売り会社を選べるようになっている7。そのサイトには100社以上の選択肢が示され、各社の電気料金や電源構成、二酸化炭素排出量まで詳細が明示されている。またスウェーデンでは、再エネによる電力を専門に扱う小売り会社もある8。多少電気料金が高くても再エネによる電力を買いたいという需要家に人気で、売上は年々拡大しているという。

 第3に、発送電分離、特に所有権分離がほぼ完了している。北欧やイギリスなど、もともと電力会社が国営だった国々はもちろん、ドイツのように民営だった国でも所有権分離が実現されている9。だからこそ、系統接続の問題は原則として解消されており、再エネの導入が進んでいる。送電会社は、自らが所有する国内の送電網とそのシステム運用に一元的に責任を持つと共に、積極的に国際連系を進めることで、更なる市場の拡大と安定性の確保を実現している。その延長線上に、デザーテック構想10のような壮大な計画もある。

 欧州では、主として送電網の広域運用により再エネの出力の不安定性を解消してきた。しかし、これ以上の再エネを電力システムに統合するには、新たな対策が必要な段階に到達しつつある。それらが、スマートグリッドによるデマンド・レスポンス、蓄電池や水素インフラの活用であり、これらの実証実験を進めつつある。

3.11後の日本の電力システム改革

 日本も自律分散型電力システムを目指すことは十分に可能であり、目指すべきである。


 第1の理由として、2011年12月に公表された政府のコスト等検証委員会の報告書の通り、日本には再エネの十分なポテンシャルがある(図表4) 。太陽光パネルや地熱発電といった関係する産業の競
争力も高い。再エネを求める「脱原発依存」という政策的方向性もある。再エネに限らず、電源や電力会社を選ぶ権利を求める声も高まっている。

 第2に、スマートグリッドは世界中で実証実験が進められているが、未だ本格的に実現した国はない。IT(情報通信技術)にしてもEVを含む蓄電池にしても、日本の技術は世界最高水準にある。ピークシフトを促す変動料金制度の導入、スマートメーターの設置と記録情報のサービス事業者への公開、小売り市場の全面自由化などを断行すれば、昨夏のような無理をせずに公平に同程度のピークカットを実現できるだろう。



6:北欧4カ国の全電力取引量に占めるノルドプールのスポット市場の割合は80%近い。日本の0.5%とは比べ物にならない。
7:Verivox社ウェブサイト。
8:Telge Energi社ウェブサイト。
9:正確には、ドイツでは大手の電力会社が4つに統合され、その内2つの送電部門は100%売却された。1つは74.9%の株式が売却され、残る1つは未だに所有(法的分離)されている。
10:北アフリカに太陽熱や風力による発電所を大量に建設し、欧州大陸と高圧直流送電網で繋ぐことにより、再エネで欧州の電力を賄おうという国際的プロジェクト。
11:ここでいう再エネの「導入ポテンシャル」とは、自然要因、法規制等の開発不可地を除いて算出したエネルギー量を指す。陸上風力については、1:保有林外、国有林外、自然公園外、2:国有林内、自然公園内、太陽光については、1:戸建住宅屋根、マンション屋根、公共施設・工場等大きな屋根、2:工場等中規模屋根や壁面、マンション壁面、高速道路の南壁面、地熱については、1:150℃以上の熱水資源、特別保護地区・特別地域への傾斜掘削を含む、2:53℃以上の熱水資源、特別保護地区・特別地域への傾斜掘削を含む、と分類した。詳しくは、「コスト等検証委員会報告書」を参照のこと。



 第3に、発送電分離、特に所有権分離は確かに容易ではないが、民間企業だから不可能という話ではない。2000年代始めにも経済産業省の審議会で議論されたが、電力会社の抵抗にあい、政治家の支持を得られずに破談した経緯がある。東京電力の国有化問題とも絡んで政治問題化しつつあるが、今こそ実現すべきであろう。そうすれば、まずは送電網の拡充と広域運用によって国内の市場統合を行うことにより、システムの安定化と再エネの統合が可能になる。そして将来的には韓国などとの国際連系を進めることで、海外へも市場を拡大する。

国民の手で構造改革を

 このように、日本では電力システムを自律分散型へと改革するための十分な技術的、資源的、産業的ポテンシャルがある。それにも関わらず、構造改革がなされてこなかったのは、ひとえに政策の失敗が原因である。

 2010年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」に記されているように、再エネよりも原発を圧倒的に重視し、市場メカニズムよりも計画経済を信じ、供給者主導で需要家の選択肢や可能性を無視してきた。我々は今こそ、これまでの硬直的で実は脆弱な電力システムから決別し、構造改革を成し遂げなければならない。それが、我々が3.11から得るべき教訓である。

 それは日本のエネルギー政策の、大げさに言えば産業社会の大転換を意味する。それだけに強い政治的リーダーシップとそれを後押しする国民の意思が必要である。政府は十分な情報公開を行い、国民に対して未来像を分かり易く示した上で、そのためにどのような負担や不都合が生じるのか12を、説明すべきである。それによって、国民的議論を経てエネルギー政策の選択がなされるはずだ。限られた数の電力会社と一部の専門家に丸投げしていた電力システムを、需要家である国民の手に取り戻すことが、自律分散化の本質なのである。

12:例えば、再エネ導入のための固定価格買取制度や送電網の拡充、原発の廃炉や除染、火力発電の運転拡大のために、短期的には電気料金が上がることは避けられないだろう。
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ジャーナリスト、池田知隆のブログです。最近の記事、イベント情報などを掲載しています。

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