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目指すは「火力並み」 高効率の太陽光発電システム


(転送メールから)
目指すは「火力並み」 高効率の太陽光発電システム
日経 2012/8/14 7:00

 太陽光発電に対する消費者の期待は高いが、技術的に改善すべき点はまだ残されている。特に、エネルギー変換効率は現在主流の方式では15%程度で、55%以上にもなる火力発電と比べると、その差は大きい。しかし、発電効率を高めただけでなく、発電時の熱エネルギーも併せて回収するという新方式のシステムを、ベンチャー企業のスマートソーラーインターナショナルが開発、販売している。その変換効率は熱回収の分も含めると40%以上に引き上げることが可能。同社は火力並みの効率を実現することを目指している。

 「目標は、太陽光発電を基盤にした技術で火力発電並みのエネルギー変換効率を実現することだ」。

 こう語るのは、2009年設立のベンチャー企業、スマートソーラーインターナショナル(仙台市)の富田孝司社長である。同氏はシャープ元常務で、シャープが太陽光発電システムで7年連続売上高世界一だったころにソーラーシステム事業本部長だった。太陽光発電業界では「ミスター・ソーラー」として知られる。

 福島第1原発事故の発生に伴い、総発電量に占める火力発電の比率が高まっている。排熱利用のコンバインドサイクル発電で55%以上になるエネルギー変換効率が強みだ。

 再生可能エネルギーにも期待は集まっているが、コストや発電量の不安定さなどが壁となって、まだ発展途上だ。話題が多い太陽光発電も変換効率に改善の余地が大きい。

 しかし、富田氏は「太陽光発電は基幹電源になり得る可能性を持っている」と断言する。2012年7月から1台8万円(税別)で本格的に販売を始めた太陽光発電システムはそれほどの自信作なのである。



ビルの屋上に設置されたスマートソーラーインターナショナルのシステム



太陽光を30倍に凝縮して発電するスマートソーラーインターナショナルのシステム  1つのモジュールは長さが約2mで幅が約60cm。中心に設置する心臓部を手にする富田孝司社長(右下)。チューブ状の容器の中に、1辺1cmの受光セルが1列に並んでいる(右上)。



■火力並みの効率も視野に


 太陽光には、紫外線から赤外線までさまざまな波長の光が含まれている。しかし、太陽電池は使う材料によって、電気エネルギーに効率良く変換できる光の波長が異なる。

 電気エネルギーに変換されなかった光のエネルギーの多くは熱となって空気中に放出される。熱は太陽光パネルの劣化の原因にもなるだけに、その対策は太陽光発電システムのメーカーにとって重要な課題になっていた。

 富田氏が開発した新システムは、逆転の発想と言える。太陽電池によって発生した熱を積極的に回収して、エネルギーとして利用しようというのだ。電気と熱でエネルギーを回収し、全体の効率を高める“太陽光版コージェネレーション(電熱併給)システム”と言えるだろう。

 使われる太陽光パネルの単位面積当たりの変換効率は23~24%で、一般的な結晶シリコン太陽電池の約1.6倍ある。熱エネルギーの回収を加えると、合計の変換効率を40%以上に引き上げることができる。

 「熱回収システムをさらに改良すれば、火力発電所に匹敵するエネルギー変換効率の実現も夢ではない」と富田氏は力を込める。


■化合物半導体の積層技術改良

 新システムが高いエネルギー変換効率を実現できるポイントは3点ある。受光セルの多層化、追尾集光、そして冷却だ。受光セルとは数センチ角のパネルのことで、これを数十枚並べたものをモジュールと呼ぶ。

 現在、太陽電池の材料は、約9割が結晶シリコンだ。主に中間の波長との相性が良いこの材料は、波長が長い赤外線を電気エネルギーに変換できない。一方、波長が短く、高いエネルギーを持つ紫外線の場合、発電はできるものの、変換できずに熱になってしまう割合も大きくなる。そのため、変換効率は理論上で29%が限界で、製品になったときは15%程度まで落ちてしまう。

 そこで、新システムのセルは、「長・中・短」の波長の光をそれぞれ効率的に変換できる複数の半導体を重ね合わせた。この多層化の技術が変換効率を高める第1のポイントだ。



多層化した受光セルを使う発電の仕組み  波長に合わせた複数の受光セルから取り出した電気を合成する(出所:スマートソーラーインターナショナル)


 同じ発想の製品としては、以前から積層方式の化合物太陽電池があった。ゲルマニウムを基板にして、インジウムガリウムヒ素、インジウムガリウムリンなどを使う。変換効率が非常に高く、放射線耐性にも優れる。しかし、ゲルマニウムは高価で熱も多く発生するという弱点がある。積層技術も開発途上で、量産化には至っていないのが現状だ。

 それに対し、富田氏は、従来とは全く異なる方法で化合物半導体を多層化する独自技術を開発した。シリコン系や有機系など色々な種類のセルも自由に組み合わせて多層化できるところが強みだ。幅広い波長域から電気を取り出し、合成することができる。組み合わせによっては、50~60%の変換効率を実現することも可能だという。

 2012年7月に発売した新システムでは、まだゲルマニウム基板を使うが、今後、開発の進捗に合わせて改良していく。従来の方法では不可能だった薄膜シリコンを基板にした化合物太陽電池を実用化できれば、さらなる低価格化が図れる。


■逆転の発想で弱みを強みに


 2つ目の追尾集光とは、太陽を追尾し、光を集める技術のことだ。現在、住宅の屋根などに設置されている固定式の太陽電池は太陽光の入射角が大きく変動する。そのため1日の平均発電可能時間は実質的に約4時間と言われている。

 そこで、富田氏は、太陽の動きに合わせて、半円形の反射鏡を動かし、常に多くの太陽光が当たるようにした。また、反射鏡を使うことに伴ってモジュールもパネル状ではなく、集光効率の高い棒状にした。現在は「30倍集光」、つまり、30の面積に当たる太陽光を1の面積に集めるタイプだが、用途に応じて50倍、100倍集光にすることも可能だ。

 ただし、セルが高熱になると性能が低下する問題がある。例えば、結晶シリコンの場合、エネルギー変換効率は約40℃をピークに急速に低下する。そこで、富田氏が新たに開発したのが、3つ目のポイントである冷却技術だ。

 チューブ状の容器の中央に、棒状に受光セルを並べた太陽電池モジュールを設置し、隙間を冷媒で満たす。太陽電池モジュールから熱を奪って気化した冷媒はチューブの外にある冷却装置で液体に戻る。ここで放出される熱を利用しようと考えたことがさらなる高効率化につながったことは前述の通りだ。



熱を取り出す冷却システムの仕組み  受光セルを冷やす冷媒を循環させて熱交換器で取り出す。

 エネルギーを熱で取り出すと、ためやすくなる利点もある。電気エネルギーの場合、2次電池に代表される高価な蓄電システムが必要となるが、熱エネルギーならばお湯にしてタンクにためられる。太陽光発電の大きな課題となっているエネルギー供給の不安定さの解消もしやすい。

 化合物半導体が結晶シリコンよりも熱に強い点も相性の良さにつながっている。例えば、インジウムガリウムリンの場合、120℃程度までほとんど性能が低下しない。熱湯を前提とした冷媒や蓄熱装置でも利用可能というわけだ。

 熱の利用方法としては、お湯のままで使う、蒸気を作りタービンを回して発電する、熱電変換素子を使って電気に変える、ヒートポンプ給湯機に使うなどを提案している。宮城県のイチゴ農家における実証試験では、電力を保管用の冷蔵庫に、熱をハウス内の暖房に使っている。



イチゴ栽培における実証実験  温水はハウスの暖房に使う。


■インド、サウジなどで有望

 スマートソーラーインターナショナルは、2011年5月に宮城県にある化学・精密機械メーカーと提携し、新システムの量産体制を整えた。当面、コンビニエンスストアや飲食店、工場などに販売する予定だ。

 また、2012年5月には、米ハワイ州ホノルルに本社があり、反射鏡による集光、集熱システムを手がけるソポジーとも業務提携した。集光や熱利用で同社の技術を活用し、富田氏が得意とする太陽電池部分との組み合わせで新システムの完成度を高めていく。

 同社の2012年度の売り上げ目標は国内外を合わせて8億円。そして、2013年度に30億円を目指す。「高温に耐える強みを生かしてインドやバングラデシュ、サウジアラビアなど日射量が多い地域に売り込む。いずれ自ら発電事業を手がけることも検討している」と富田氏は話す。

(科学技術ジャーナリスト 山田久美)



[日経エコロジー2012年8月号の記事を基に再構成]

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日経 2012年3月1日

ソーラーフロンティア、CIS薄膜太陽電池でエネルギー変換効率の世界記録を更新
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 昭和シェル石油100%子会社で太陽電池生産・販売のソーラーフロンティアは、CIS(銅・インジウム・セレン)薄膜太陽電池でエネルギー変換効率の世界記録を更新した。17.8%を達成し、2011年3月に自ら記録した17.2%を0.6ポイント上回った。これまでの大規模な供給契約締結の実績や、年間1GW(1000MW=100万kW)を誇る生産能力に加え、技術力の高さを証明したという。

 新たに世界最高となった17.8%のエネルギー変換効率は、30cm角のCIS薄膜太陽電池サブモジュールの開口部面積で記録した。ソーラーフロンティアは「極めて小さな面積で技術開発すれば、より高いエネルギー変換効率が達成できる」としながらも、商業生産への適用を容易にするため、サブモジュールで開発。記録更新は、商業用モジュールの変換効率向上につながる。

 変換効率は、太陽電池技術の研究開発拠点、厚木リサーチセンター(神奈川県厚木市)で測定した。厚木リサーチセンターのCIS薄膜太陽電池の生産工程は、商業生産を実施している国富工場(宮崎県国富町)とほぼ同じで、商業生産技術を念頭に置いている。国富工場では、開口部面積の変換効率14.5%、モジュール変換効率13.38%のCIS薄膜太陽電池の生産に成功している。

 これまで2010年9月に16.3%、2011年3月に17.2%と、着実にエネルギー変換効率を高めてきた。今後は、今回達成した17.8%をさらに上回る変換効率を目指して開発を進める。CIS太陽電池は、独自技術による銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を使った次世代型太陽電池。日本最大の出力10MW(1万kW)のメガソーラー「米倉山太陽光発電所」(甲府市)にも採用された。

(日経BP環境経営フォーラム)
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